宇宙船コンテストで優勝を狙う
会場は熱気に包まれていた。今日は「宇宙船コンテスト」の開催日なのだ。各自持ち寄った宇宙船の模型を審議し、最優秀賞のものは、なんと実機が制作される。そして処女航行に同乗させてもらえるのだった。
スポンサーはビル・ゲイツ、それに映画監督のジョージ・ルーカスだ。宇宙船が完成したら土星の衛星・タイタンへと飛び、ゲイツはそこに「マイクロソフト・タイタン事業所」を作り、ルーカスは「真・タイタンの戦い」という映画を撮るつもりなのだという。
それにしても、出品されている宇宙船の模型はすごい数だ。ざっと見て、1000点は軽く超えている。
展示してある作品を、わたしは見て回った。そこかしこにプロペラのついた、帆船型のものがある。宇宙には空気がないので、こんな構造は意味がないのにと、心の中で笑う。
スター・トレックに登場する、エンター・プライズ号そっくりの模型もあった。作者のラベルには、「完全なるオリジナル。宇宙で初めにこの形を思いついたのはボクです」と添え書きがしてあった。
思わず(嘘をつけっ)と突っ込まずにはいられない。
とある模型の前では、中学生くらいの姉妹が立っていた。
「これじゃ飛べないんじゃない? だって、噴射するところないもの」姉らしい方が指摘する。その作品を見て、なるほど当然だ、とうなずく。
大胆にも、カニの形を模した宇宙船だった。それを「宇宙船」と呼べればの話だが。
スイッチを押すと、両手のハサミをカチカチと鳴らし、一生懸命にはばたく。そんなので宙を浮くことができれば、誰も苦労などしない。
妹は少しむくれた顔をし、
「じゃ、お姉のはどんなの?」と聞いた。
「わたしのはこれ」姉が指さしたのはヒトデ型だった。この妹にして、この姉ありである。
妹はケラケラと笑って馬鹿にした。
「ヒトデなんて気持ち悪いだけじゃん。カニの方が絶対、可愛いって」
「あんた、馬鹿ね。別に可愛いからこの形にしたんじゃないの。UFOを見習って、こうしたんだから。UFOって、クルクル回転しながら飛ぶわけじゃない? だから、ヒトデの形はうってつけなのよ」
なるほど、言われてみればもっともだ。そうか、ヒトデは宇宙船にふさわしいんだな。
わたしは感心し、自分の作りかけだった模型に、ひと工夫しようと思いたった。
わたしの宇宙船はオーソドックスなロケット・タイプだったけれど、10本の触手を付け足して、イカの形に似せた。
「ヒトデが宇宙を飛ぶなら、イカだっていいはずだ」
わたしは出来映えに満足する。
このコンテスト、どうやら優勝は決まったな。