深夜映画を観る
深夜映画を観ている。
こんなストーリーだった。
あるところに仲のよい姉妹が住んでいた。
彼女たちは野原で蛇を見つけ、二人して家で飼うことにするのだが、それをたまたま友達に知られてしまい、「こんな気味の悪い生き物なんか!」と捨てられてしまう。
妹は蛇を探し出すが、姉はそれを見て「よく似ているけど、違う蛇ね」と言う。もっとも、その蛇でも十分に満足で、姉妹は幸せそうである。
それを今度は大人たちが見とがめ、危ないからと取り上げようとする。姉妹はとっさに海へと逃げこみ、底まで潜ってしまう。
水の底には岩があって、表面にはヘビを形取った窪みがあった。姉妹は、つかんでいたヘビをそこにあてがってみる。
すると、窪みにぴったりとはまり、秘密の入り口が開くのだった。
なかなかおもしろそうな映画だったので、番組表で調べたところ、「一日の出来事」というタイトルだった。作品の紹介には、こんなことが書いてあった。
「鐘の音、空襲警報のサイレン、それがこの小さな静かな町を支配していた。主人公は戦闘機乗り。毎日、別の町へと飛んでいき、爆撃してくることを職業にしてた。
今日も一日、変わりない日が過ぎていく……」
主人公の男は姉妹の父だった。男は、仕事を終え、友人を尋ねる道中にいた。間近で見ると彼は、中東人ふうの顔をしていた。
道々、奇妙な遺跡が目に付く。
石膏のように白い岩に、等間隔で穴がくり抜かれている。まるでアパートを連想させた。
はるか昔、この地域に住んでいた先住民族の住処だという。
男の友人は団地に住んでいた。彼の母が出てきたが、彼女もまた中東人らしい顔だちをしてた。
どうも彼女は、この男を歓迎していない様子である。というのも、男が戦闘機乗りだということを知っていたからだ。
息子まで、彼に誘われて戦闘機乗りになることを懸念しているらしかった。
その通り、男はその友人を戦闘機乗りにと勧誘しに来たのである。
母親は当然、渋い顔をして首を横に振る。
けれど、男が財布を出して、見たことのない紙幣を「1枚、2枚……」と数えながら交渉を始めると、彼女も次第に打ち解けてきた。戦闘機乗りも、それほど悪くない商売だ、そう考え直したようだ。
そうしたシーンをテレビ越しに見ながら、わたしは内心、
(この交渉はきっと成立するだろう)と確信するのだった。